Glaubeさん誕生日記念短編小説

『ぐらさんとグラタンとサングラスと私』



 ドアを開けると、そこは混沌だった。
 あまり大きくない部屋は、玄関から一直線に中を見ることが出来る。私の視界に入ってきたのは、万年床っぽい敷かれた布団と本棚と机。そこにハーフパンツのままに唖然としてこちらを見ているぐらさんがいた。

Σ(`・ω・´)ノシ。oO(いきなり入らないでくださいよー)

 いきなりと言われても鍵がかかってなかったんだから仕方がない。鍵が開いている→受け入れ態勢万端というエンゲルスも七千行に渡って証明しているんだから反論は無し。それを否定する公式を七千一行書きなさい。

(;`・ω・´)。oO(無理無理)

 と、ぐらさんは諦めたので試合終了。玄関にいるのもあれそれどれやねんなので、さっさと上がらせてもらう。靴下から伝わるのは三十パーセントの埃っぽさ。どうやら毎日掃除をしているらしい。綺麗にすることには誇りがあるようだ。いや、Glaubeか。
「それにしても何してたの? そんな上半身を剥き出しにして。新手のセクハラ?」

Σ(`・ω・´;=;`・ω・´)

 そんな全身を振って否定しないでも。もちろん冗談だし。ただ、それだけ汗に滑っててハーフパンツで上半身裸だとワイルドを通り越してセクハラなんだけれどね。

(`⊃ω;´)……

「あ、ごめんごめん」
 ぐらさんの心の隙間に手を入れてしまったようで。そのまま鎖骨にも指を入れてうっちゃっても良かったけれど、今日の目的を思い出したらいつものそんなことはするわけには行かない。
 何しろ今日は特別な日だ。
「ぐらさんをからかうの楽しいからついつい甘えちゃうのよねー。はい、大好きな百度お茶」

(;`・ω・´)~~.。oO(好きだっけ???)

「あれ? 前に言ってたよね? 『熱血大好き』って」

(;`・ω・´)~~.。oO(それ意味違うし!)

「まあ、そんなことどうでもいいからその布団を片付けなさい」

∠(`・ω・´;).。oO(はい!)

ブィーン仝(`・ω・´;)======(;`・ω・´)仝ブィーン

 そうして掃除を始めたぐらさんの背中を見ながら、私はバッグに忍ばせていたプレゼントを取り出した。包んでいた綺麗な包みを掃除機の音に紛らせて丁寧に取り、箱をかぽっと開けて中身を取り出す。
 窓から差し込んでくる日光に黒光するそれ。ゆっくりと開かれる可動部の様は翼を広げる雛鳥のごとし。なかなか取れない埃に掃除機をこすりつけているぐらさんの背後に忍びよって、私は「しゃおらー!」と掛け声一発。素早く手を動かした。

Σ(`●ω●´)

「ふ。やはり似合ったわね」

(ノ`●ω●´)ノ.。oO(これはなんですかー!? そして取れないし!)

「それは私が五十店ほど回った気になって買ってきたサングラスさ。耳に当たる部分に瞬間接着剤という名の味噌を塗っておいた」
 私のプレゼントにぐらさんは喜んだようで、必死になってサングラスを外そうとしてる。そんなに照れなくてもいいのに。

(;`・ω・´)っ●〜●.。oO(照れてないですよ!? ……でもまあ、ありがとうございます)

「じゃあ、掃除も終わったことだし、グラタン作ってよ」

Σ(`・ω・´).。oO(なんでですか!? 私、朝ご飯食べたばかりですよ!?)

「大丈夫。まだ、九時だからお腹に入れば同じ。プレゼント持ってきたんだからそれなりのお礼を」

(;`・ω・´).。oO(私の誕生日なのに……ギブアンドテイクですか……)

 なかなか渋ってるぐらさんに、私は最後の一手を送ることにした。さりげなく傍に近寄って、一気に抱きつく。動揺したぐらさんは硬直して私の顔を見てきたけれど、それは好都合だった。
 魚を狙うかもめのようにぐらさんのほっぺにキスを連打した。
 十……
 二十……
 三十……
 四十九。

(*`・ω・´).。oO(なんで四十九で止めるんですか……)

 ぐらさんの頬は永野椎名林檎のように腫れ上がっていたけれど、まあよさげに悦に入っていた。私はふん、と女王様笑みを浮かべてから言う。
「続きはグラタンを食べながら」

(;*`●ω●´).。oO(が、がんばります……)

「いい加減、目覚めなさい。迷える子羊よ」
 ぐらさんはそのままキッチンへと向かい、私は決め台詞を言ってから窓枠をこすってみる。指につくのは灰色の埃。やっぱり、床だけじゃ駄目ね。
 折角グラタンを作ってくれてるんだし、私はもう少し掃除してあげましょうかね。
 あ、一番大事なこと忘れてた。
「ぐらさん。誕生日おめでとう」

(ノ`●ω●´*)ノ.。oO(……ありがとうございますー!)

 こうして、私たちの特別な一日が始まった。



Glaubeさん、誕生日おめでとうございます!

そしてこんなんですみませんOTZ