Mission6・before:――。
――某月某日某時間――


 ふ〜んふふ〜ん、んん〜♪
 んー♪
 むむっ。
 むー……。
 ……なんだいきなり? 百面相をしおってからに。
 わきゃあ――――――っ!?
 うおわあっ!?
 いいいいつからいたのですっ!?
 いや、いつからというか……今来たばかりだが。
 ほぅー……よかったです。
 ……こっちは良くないんだが。なんだ一体。何かしてるようだが。
 こ、これはなんでもないのです! なんでもあるけどなんでもないから気にしなくても大丈夫なのですよ。
 落ち着け。……しかし、気になるな、どれ――
 あ、や――――!
ぷすっ。
 どわだだだだだ―――ーっ!?お、お前――っ!

 床をもんどりうつ私を尻目に、ぐらたんは焦りながらも眉を逆ハの字に立てている。

 の、覗こうとしたほうが悪いのです!人権侵害セクハラその他なのですよ!
 お前、人の視覚デバイスを針で刺しておいて言うに事欠いてそれか!? しかも、普段は硬質化すらさせてないところだぞ!
 乙女の秘密は命より尊いのです!バレたが最後、パーフェクトデストロイですよ!
 何が乙女だこのたわけ! って待てお前、どこに行く!話は終わって――

 と、言い終わる前にぐらたんは姿を消した。恐らく、方角的に自分の部屋に行ったのだろう。

 くそ……今度あったらただじゃおかんぞ。
 しかし、あいつは一体何を……ん?

 先ほどまでぐらたんの座っていたソファー、その周りにあるのは――

 糸くずに布切れ……? 色は緑と白と、青に黄色というところか。何故、こんなところにこんなものが。

 ぐらたんの去った方向に、視覚デバイスと聴覚デバイスを傾ける。静かなもので、特にこれといった動きはないように見える。

 ……よく、分からんな。難しい奴だ。

 そういえば、会った時からそうだった。普通はこんな奇怪なロボットなど拾いもしないだろうし、ロボットに食べ物を与えようともしない。さらに言うなら、拾ったロボット相手にケンカして負けて泣き出す人間などそうそういないだろう。

 ……秘密、か……。

 確かに難しい……というか、変な奴ではある。だが、ここ数ヶ月で大分人となりが分かってきた。少なくとも悪い奴じゃないし、隠し事をするような奴でもない。それが、今度に限っては秘密と出た。
 秘密など誰にも五万とあるだろうが……

 糸くずと布キレを拾い、ゴミ箱へ捨てる。……そこからは、何故か動く気が起きなかった。頭部はゴミ箱を凝視したまま、動くことを知らない。
 ……ぬるま湯に浸かり過ぎて、勝手な思い込みをしていたのかもしれんな。

 それが何かは口に出す気はない。とりあえず、それを明確に分析しながら、行動パターンのチャート修正を行い、

 ――。

 大きな鉄の足音を立て、私は自室へと戻ることにした。

――Mission6:continued――