Mission3:人選……間違えたかな。
そうして1週間が経ち、だんだんと私はぐらたんとの生活に慣れていった。とは言うものの……
ふむ……ヤツラの動きはなし、か。
とりあえず、平和そのものだ。茶色のソファで新聞読みながら、意外と動きがないことに驚い――
ズガガガガガッガガッ! ドム! ボン、ボボン!!
なっ、なんだ!?
轟く爆音、響く振動。それはもう、揺れる揺れる。
センサー探知……台所? 爆発物はなかったはずだが……もしや。
とりあえず新聞を置いて、ガシャコガシャコと台所へ歩く。
ふみ〜……
で、そこで見つけたのは。
この惨状……ところどころ吹っ飛んでひっくり返ってるが、まさか、またやったのか?
爆心地もかくや、という感じの台所だった。ものはひしゃげ、灰色に塗りつぶされている。
そして、その中心には、灰色のぐらたんがぺたりと座り込んでいる。
こ、今度はうまく行くと思ったのですよ。今度はっ。
スパーンッ。
ふみっ!?
だ、か、ら! 変な料理は作るなとあれほど言っているだろうが!
どこからか取り出したハリセンを一閃、ひっぱたいた後にはもちろん説教。これも日常茶飯事になってしまっている。
全く、普通に料理は作れる癖に……どうしてこうも怪しい料理を作ろうとするのか。
今回は何だ? ……ってお前、ニトログリセリンとか入れて何作るつもりだ!?
……血管広がって血行良くなるですよ。健康にいいのですよ。(ボソボソ)
健康な人間にそんなもの使ってどうする。あと血管広がるからって健康にいいわけじゃない。ったく、どうするんだこの惨状。冷蔵庫とかまた買いなおしだぞ。
む〜……
とりあえずハリセンをしまい、排気ダクトからろ過した風を出してぐらたんに吹き付ける。ちっちゃい悲鳴を上げると、その後には埃やら何やらが取れて、それなりに綺麗になった。
ほら、立て。電気店に買出しに行くぞ。
さっきから座り込んでいるぐらたんを急かし、体を洗って着替えるように言う。その間、私はここの後始末に専念、だ。
しぶしぶと去っていくぐらたんを見ながら、私は嘆息する(機械だから実際に嘆息するわけではないが)。
(健康のためか知らんが、あのクセはどうにかならんものか……というか、よく金が持つな)
3日に一回ぐらいの確率で、この家では「何か」が起こる。大体において、ぐらたんが引き金であり、今のところ一番多いのは「健康のためにいいもの作ろうとして爆発」だったりする。
そして、ぐらたんは非常に優れた資金源を持っているらしく、こういった被害をすぐに修復している。
今回の電化製品にしたって、さっと買ってきて何事もなく元に戻るだろう。
(……謎が多いヤツだ。今のところ、特に問題はないが……)
「ふきゃっ!?」
ドタン。
…………。(また転んだのか……)
このバリアフリーの家で、どうやったら転べるのか……逆に聞いていたい気もする。しかし……
人選……間違えたかな。
――Mission3:complete――